⑤トップの無私の姿勢
日本航空再建を成功に導いた第五の要因として、再建にあたった稲盛会長の姿勢が社員の心を揺り動かしました。つまり、稲盛氏が無給で会長職を引き受け、高齢でありながら、全身全霊を傾けて再建に取り組む姿勢が有形無形の影響を社員に与えていったのです。当初は週3日勤務と考えていた稲盛氏でしたが、やがて4日になり5日になり、週の大半の時間を日本航空の為に費やしていきました。この為、週のほとんどを東京のホテルで過ごし、夜の食事がおにぎり2個だけという日がしばしばあったといいます。意図したわけではないが、そうした無私の姿勢で懸命に再建に取り組む会長の姿をみて多くの社員が「自分の父親や祖父にあたるような年齢で、なんの対価も求めず、何の関係もない日本航空の再建のために必死になってくれている。ならば、自分たちは、それ以上に全力を尽くさなければならない。」と考えてくれました。このことも、日本航空の社員ひとりひとりが再建に全力を挙げて取り組むにあたり、大きなモチベーションとなったのです。